2014年9月23日火曜日

ハリウッド映画製作に欠かせない「思いやり」と「信頼」

  映画製作は、俳優、スタッフがひとつになって、より良い映画を創ることを目標としてそれぞれのベストを尽くし撮影に取り組みます。ハリウッド映画の製作に関わっていて、互いの「信頼」と相手への「思いやり」が成功の鍵だと感じます。

 製作サイドから俳優達への思いやり。俳優が気持ちよく役作りができる環境を作ります。撮影初日には、俳優達のトレーラー(控え室)には、Welcome Basketと呼ばれる、色々なスナックや飲み物が入ったバスケットが運ばれます。そのバスケットは、映画の内容に応じた演出が凝らされて、彼らのトレーラを華やかにし、待ち時間に退屈しないようにとの心使いを感じます。そのお返しに、撮影の終了後、スタッフへ「お疲れさま」ギフトを渡す俳優達も多くいます。映画のロゴ入りのトレーナーやバックパック、その俳優のトレードマークと同じ帽子、映画の台詞が刻まれたワイン、iPodなど。俳優達も趣向を凝らして彼らの思いやりが感じられます。

 映画撮影前に監督は、それぞれの部署のヘッド(部長)と綿密に撮影内容、監督の考え、ビジョンを話し合います。撮影部、美術部、照明部、衣裳部、メイク、ヘアー部、特殊効果部等など。それぞれの部署のヘッドは、監督のビジョンを映像にするために経験と知恵を出します。監督は、自分の意見を伝えた後は、余程のことがない限り、それぞれの部署のヘッドに任せてしまいます。彼らのクリエイティブな才能、経験への信頼です。

 スタッフの食事を作るシェフのスタッフへの思いやり。数ヶ月に及ぶ撮影が続く我々スタッフの食事を作るシェフ。この長い期間一日足りとも同じメニューはありません。また、食事と食事の間、少しお腹がすきそうな時間にスタジオ内へ「つなぎ食」と呼ばれるものが運ばれてきます。多種のスープ、サンドイッチ、フィンガーフードと呼ばれる指でつまめる食べ物、メキシコ料理のタコスや、時には寿司など。撮影現場の緊張のなか、より良いシーンを撮れるようにベストを尽くしているスタッフへの思いやりです。

 映画製作の上層部であるプロデューサーからスタッフへの思いやり。プロデューサーが何かを頼んだ時は、必ず "Thank you"。相手が、経験の浅いアシスタント、ドライバーの人、掃除の人も含めて、感謝の言葉を伝えます。もちろん仕事ですから、やることをやって当然ですが、そこに"Thank you"の一言があれば、頑張りがいがありますし、もっと頑張ろうという気持ちがでてきます。

 ベストを尽くして働いている者の間で信頼関係が築かれ、その信頼関係から自然とお互いを思いやる気持ちはでてきます。そして、どれもこれもが相乗効果を表して、より良い映画が完成されるのだと思いました。