十年前、映画「ラストサムライ」で、プロダクション スーパーバイザーという大役を任され、一年以上に渡りこの映画の製作に取り組みました。ワーナーブラザーズ製作のメジャーなハリウッド映画の仕事で、ロサンゼルス在住の日本人である私が就くことができる最高のポジションかもしれないと仕事中も何度も感じていました。
この以前からもハリウッド映画の仕事には携わっていましたが、「ラストサムライ」の時は、監督、カメラマン、美術監督と一緒にロケハン(撮影場所を決めるために、候補にあがった場所を見に行くこと)に参加し、実際に映画の内容についても自分の意見を言える立場となり、長年の夢だった「ハリウッド映画の製作の仕事」の頂点に達した仕事となりました。エキサイティングな毎日でしたが、多くのチャレンジもあり、大げさかもしれませんが、全身全霊を注いで仕事に取り組んだ毎日でした。
「ラストサムライ」の一年数ヶ月に及ぶ長い仕事が終わり、ロサンゼルスに戻ってきた後、何をしていいかわからない自分がいました。もちろん、大きな仕事の後の疲れなどもありますが、何も手につかない毎日が続きました。ロケ先のニュージーランドから送られてきた荷物の箱は何ヶ月も玄関先に山積みのまま。友人と食事に行くと、オーダーするものがなかなか決まらない。ネイルショップに行くと、自分で色を決められず、ネイリストに選んでもらう。仕事中は終わったらバケーションを、と思っていたにもかかわらず、どこに行きたいかわからない。など、何も決められない自分がいました。
自分の夢に向かってひたすら走り、その夢が叶った後、どうすればいいか? その答えは、次の夢、目標をたてる、ということです。自分を知って、理解していれば、次の夢、目標をたてることは容易ではないでしょうか?
「ラストサムライ」の仕事中にある人から、「蔭山さんは仕事はできるけど、自分のことになると違うんだよね。」というコメントを受けました。撮影後の何も決められない私をみすかしていたような発言でした。
私がその頃できなかった自分を知り、より理解するということを、この本を通してひとりでも多くの人にしてもらいたいです。大きい夢、小さい夢、多くの夢を思い描き、ひとつの夢を叶えたら、次の夢へのステップを踏み出しましょう。時間は永遠にあるようで、実際はそうではないのですから。。。